寝ている間に暗記が出来る?睡眠学習に効果はあるのか
あなたは睡眠学習をしたことがあるだろうか。眠っている間に、学習が出来るというものらしい。しかし、本当にこれほどまでに画期的であればもっと流行してもいいはずだ。睡眠学習の実態に迫りたい。
そもそもこの言葉は、1924年にジェンキンスとダレンバックによる「記憶の保持率は覚醒条件よりも睡眠条件のほうが高い」という実験結果が「記憶したいことがあれば睡眠時に聞くことで覚えられる」という意味で。曲解されたことにより生まれたものである。結果として、日本でも1960年代に睡眠学習機として枕にテープレコーダーを仕込んだものが発売され累計50万台以上の大ヒットした。
そう。
そもそもこの「睡眠学習」という言葉は全く違う研究結果から生まれた根拠のないメソッドだったのだ。勿論、エビデンスのないこの学習法によって50万人の購入者が効果的な結果を得られるわけがなかったことは言うまでもない。価値のないものを人は使い続けるほど愚かではない。
当然のようにこの睡眠学習機は私達の前から姿を消した。
しかし、その後もこのテーマに関心がある人は睡眠学習の可能性を諦めなかった。
眠りながらの学習に効果はあるのか
実はそうでもなさそうだ。イギリスのオックスフォード大学による2014年の研究「Boosting Vocabulary Learning by Verbal Cueing During Sleep」によると、あなたが言語学習のために語彙力を強化したいのであれば睡眠学習が効果的でと結論付けられている。これまで有効性に対して懐疑的だった人たちに睡眠学習に対する考え方を一気に変えた研究になった。
研究内容は以下の通りだ。
被験者にオランダ語の単語を記憶してもらい、ノンレム睡眠、能動的に覚醒中の状態、受動的に覚醒中の状態それぞれで比較した。その後、ドイツ語に翻訳するテストを行った結果、睡眠中のほうが成績が良かったということが明らかになったという。
つまり、睡眠学習には特定の条件においては確実に効果を発揮するということが明らかになったのだ。その条件とは何なのだろうか。
参考:「Boosting Vocabulary Learning by Verbal Cueing During Sleep」 https://academic.oup.com/cercor/article/25/11/4169/2366428
睡眠学習を効果的にする条件の一つとして、TMR(Targeted Memory Reactivation)と呼ぶ手法がある。カナダのウェスタン大学の研究者によって明らかになったこの手法は、眠っている時に音や臭いなどの合図を与えて、紐付けさせることで起きている時に記憶したものを活性化させる効果があるということだ。
つまり、あなたが睡眠学習をしたいと思った時に今まで習ったことのない新しいことを覚えようとしてもそれは無駄だ。日中にあなたが記憶しようと試みたもの、ここでは外国語のボキャブラリーを増やそうと試みたものでないと効果は発揮しないのだ。知らないことを睡眠中に学習するのではなく、日中学んだことの復習に睡眠学習は効果的だと言えるのだ。
オックスフォードの研究によって、ノンレム睡眠時に睡眠学習を用いることが効果的であることと、言葉が記憶を活性化させるキューとして有効であることは証明された。しかし、あなた一人でノンレム睡眠時に音を流すことをコントロールすることはそう簡単ではないだろう。
そこであなたでも実践できるやり方を紹介したい。
効果的な睡眠学習のやり方
参考: 「あなたの眠りを支える睡眠アプリ7選」https://www.saluce.jp/wp/articles/49
そして、自分のスパンが分かればあなたは記憶したい単語の音楽を眠り前にタイマーとして設定しておく。ここで注意すべきは眠りにつく時点では音楽を流しておくことはオススメしないということだ。眠りにつく時点の音楽は入眠を阻害する可能性がある。ノンレム睡眠に入るだろうタイミングで流れ始めるようにタイマーを設定しておくことがベストだろう。
最後は計測するだけだ。自分の脳が本当に記憶できているのか、記憶が定着しているのかをテストしてみる。
そうするだけで睡眠学習の効果は感じられるはずだ。
いかがだろうか
出来る限りエビデンスに基づいた正しいやり方で効果を実感できるように実践して欲しい。
勿論、あくまで研究結果に過ぎないのだからあなたにとって睡眠学習が効果がないと感じるのであればやめるほうが賢明だ。
試験前や大事な会議の前、どうしても覚えたいが時間がない。
かといって睡眠時間を削ってしまうと余計に効率が悪くなるような気がする。
「寝ている間に記憶できていればなぁ....」そう夢見たあなたの思いは叶うかもしれない。