本当にプチ断食で宿便に効果があるのか?科学的根拠から検証してみた

ここ数年、健康志向の高まりからプチ断食(ファスティング)は一般的に知られるようになってきた。主に宿便の排出・デトックス・ダイエットなどを目的に行われることが多いだろう。また、美肌や免疫力の向上、気分の改善などの効果もうたわれている。しかし、ダイエットを例に取れば、失敗してリバウンドしてしまったということも少なくない。果たしてプチ断食には、宿便の排出・デトックス・ダイエットなどの効果が本当にあるのだろうか。今回は、プチ断食とその効果について、科学的根拠の有無から検証してみる。


一般的に知られている断食(ファスティング)とは

断食とは、本来、全ての食べ物または決められた食べ物を摂ることを断つ宗教的な行為である。イスラム教のラマダーン月に断食をすることは特に知られている。現在は、健康や病気の治療、ダイエットを目的としての断食が一般的に広がっている。英語では、ファスティングという。医学的な管理下で断食を行えば、安全にダイエットや血糖値のコントロールはできる。病気を治療するために断食療法が用いられることがあり、消化器疾患・糖尿病・神経症・不眠症などに適用している。

一般的に知られているプチ断食とは

プチ断食とは、半日から3日程度の短期間だけ断食をすることである。朝食を抜くだけのプチ断食や週末だけ行うプチ断食など、仕事をしながらでも簡単に行える方法が提唱されている。目的は、日々の生活で疲労した消化器(胃腸)を休ませ、本来の機能を取り戻すことと言われる。プチ断食をすることによって、消化器は排泄に集中することができるため、宿便の排出も期待されている。ダイエットを目的として行うプチ断食と食事制限を比較すると、ダイエット効果と健康促進効果があるが両者とも同等の効果であると報告されている。一般的にプチ断食をすることで得られる効果を以下に挙げておく。 ・ダイエット効果 ・消化器を休ませることができる ・デトックス効果 ・免疫力が向上する ・気分が前向きになる ・睡眠状態が改善する

科学的根拠のあるプチ断食により得られる効果

断食をすることにより、細胞の老化を遅らせるたんぱく質が働く。また、オートファジーと呼ばれる、細胞の中にあるたんぱく質を分解する現象が起こる。断食によってエネルギー源が枯渇状態となる。そこで、オートファジーによって細胞の中にある優先順位の低い不要なたんぱく質を分解して必要なたんぱく質に作り変える。細胞の中にある不要なたんぱく質は、老化や病気を引き起こすこともあり、これを予防させることになる。脳の中では、神経細胞の栄養になる物質が増加する。これは、神経細胞を新しく作ったり、神経細胞のつながりが強化されたり、神経細胞の死滅を防いだりすることにつながる。

宿便とは

一般的には、腸のヒダなどに溜まったヘドロのようなものと言われるが、その説明に科学的根拠はない。これは、東洋医学での考え方が一般的に知られるようになったものである。西洋医学的には、便秘や病気で消化器機能の異常が起こることによって、腸内に長期間排出されないで溜まっている便のことである。宿便が溜まってくると、便秘だけでなく、腹痛や嘔吐を引き起こすこともある。

プチ断食、宿便ともに科学的根拠はない

プチ断食

一般的に、プチ断食によって得られる効果については、科学的根拠がほとんどない。日常の生活で疲労した消化器(胃腸)を休ませることによって、腸のぜん動運動を促すことができると言われているが、これにも科学的根拠はない。そうなると、美肌効果についても期待はできないことになる。また、プチ断食によるエネルギー源の枯渇から筋肉内のグリコーゲンをエネルギー源として使用されることになり、筋力低下を引き起こす恐れがある。プチ断食に劇的なダイエット効果は認められていない。また、長期的な体重の調整にも適しておらず、効果についても明確なものは確認されていない。

宿便

宿便を排出することをデトックスと表現される場合もあるが、その理論自体に科学的根拠はない。人間の身体は、健康であれば腎臓や肝臓が毒素を身体外に排出する機能を持っている。もし、毒素が溜まってしまう状態になった場合、それは腎臓や肝臓の機能に問題が起きていることを示す。よって、プチ断食で宿便を排出したり、汗をかくことで毒素を排出することなどには科学的根拠は認められない。

プチ断食は何を目的に行うのか

科学的根拠から考えてプチ断食の目に見える目的としては、短期的なダイエットということになる。しかし、ダイエットとして行われることの多い、食事制限と効果は変わりない。ダイエットを行う場合の選択肢としてプチ断食は挙げられるが、選択するかどうかについては個人の好みや性格などから考えることになる。プチ断食によるダイエットの継続率は6割程度である。精神的な負担が大きいことは言うまでもない。プチ断食を短期間、定期的に行うことによって老化や病気の予防が期待できる。注意しなければならないのは、過去に摂食障害を患ったことがある場合には、プチ断食は危険性が高いことである。

宿便を出す方法

宿便は、西洋医学的には便秘や消化器機能の異常などによって腸内に長期間溜まった便である。プチ断食による消化器機能の改善の科学的根拠は認められていない。そのため、プチ断食による宿便の排出効果も認められていないことになる。日常生活の中で宿便を出しやすくするためには、生活習慣と食事を気をつけることが大切になる。規則正しい生活を送り、起床時には水などを飲んで胃・大腸反射を引き起こすこと。また、適度な運動を習慣的に行うことも大切である。お腹をマッサージすることも腸のぜん動運動を促すためには効果的となる。食事としては、食物繊維や果物、いも類やきのこ類、ヨーグルトなどを積極的に食べるとよい。水分をしっかり摂ることも忘れてはいけない。

腸内洗浄

日常生活での工夫によって宿便を排出できない場合は、医療機関での腸内洗浄を受けることも一つの方法である。腸内洗浄とは、薬品を使用しないで安全な温水を使用して腸を洗浄するセラピーのこと。病気の治療ではないため、健康保険は適用されず費用は自己負担となる。腸内洗浄によって、肌荒れの改善・むくみの改善・お腹の張りの改善などの効果が期待できる。宿便が溜まって体調不良になっていることが考えられる場合は、まず最寄りの医療機関を受診することをおすすめする。

科学的根拠を信じるか体験談を信じるか

ここまで、プチ断食と宿便の排出などの効果についての科学的根拠をみてきた。しかし、インターネットや書籍から、プチ断食による宿便の排出・美肌・ダイエットなどの効果が得られたという情報もある。また、医師がプチ断食を勧めている場合もある。結論としては、プチ断食のメリット・デメリットともに科学的根拠はほとんど認められていないということである。そのため、プチ断食をするかしないかは自己判断ということになる。情報収集をする上で、どのような立場の人が言っているのかをしっかりと確認して参考にすることが大切である。そして、プチ断食を実際に行う場合には、健康状態に十分注意して進める必要がある。可能であれば、専門家の指導を受けることが最も安全な方法となる。

まとめ

プチ断食による宿便の排出やデトックスなどには科学的根拠はないことがわかった。しかし、プチ断食そのものに何も効果がないわけではない。メリット・デメリットについては、どちらも明確な科学的根拠は示されていない。また、断食には、医学的管理下で行わなければ健康を害する危険性もあるため注意が必要である。プチ断食をする場合は、科学的根拠を理解した上で十分に情報収集をすることが大切になる。身体に関わることであるため、慎重に検討してプチ断食をすることをおすすめする。 参考:「眠気に効果がある?断食の7つのメリット」|saluce https://www.saluce.jp/wp/articles/84 「プチ断食のやり方と期待される効果とは」|saluce https://www.saluce.jp/wp/articles/156
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