睡眠と頭痛の関係とは?原因は寝不足か寝過ぎなのか

日本人の3~4人に1人は週に1日以上頭痛になる、いわゆる頭痛持ち。男性は20~30代、女性は30~40代に多くみられる。頭痛が起こる原因は、はっきりしているものとはっきり分かっていないものがある。そんな中でも、頭痛と睡眠には因果関係が認められているが、寝不足と寝過ぎのどちらが影響するのだろうか。答えは両方である。今回は、頭痛の種類を確認し、睡眠との関係を紐解いていく。そして、睡眠の質を高める方法を紹介する。


頭痛にはどのような種類があるのか

頭痛は、大きく分けて二つに分類される。特に病気が原因で起こるわけではない、いわゆる頭痛持ちが含まれるものを一次性頭痛。命に関わる病気を含む、何らかの原因がはっきりとしている頭痛を二次性頭痛と呼ぶ。割合としては、一次性頭痛が9割と大部分を占め、二次性頭痛は1割である。

一次性頭痛

片頭痛

脳の血管が何らかの原因で急激に拡張することにより起こる。周囲の血管が拡張することにより、脳神経である三叉神経が刺激されて炎症を起こす。そして、炎症物質がさらに血管を拡張させる。ズキズキと拍動するような痛みが特徴的で、吐き気や嘔吐を伴うこともある。原因としては、気圧の変化・ストレスの多い生活・女性の場合はホルモンバランスの崩れ・寝すぎ・寝不足などが挙げられる。

緊張型頭痛

頭周囲の筋肉や肩、首周りの筋肉が緊張することによって起こる。筋肉の緊張により血液循環が悪くなり、筋肉内に老廃物がたまる。それが周囲の神経を刺激することにより起こる。原因としては、ストレスの多い生活・長時間のパソコン使用・長時間同じ姿勢でいることなどが挙げられる。後頭部から首筋、肩にかけて締め付けられるような痛みが特徴的で吐き気などは伴わない。

群発頭痛

何らかの原因で視床下部が刺激を受けて三叉神経により痛みを感じる。片側の目の奥辺りに激痛が起こり、目の充血や涙、鼻水が止まらなくなる。症状が1~2ヶ月程度、毎日のように起こることから群発頭痛と呼ばれる。目の奥を針で刺されるような激しい痛みが特徴的である。原因としては、疲労・寝不足・体内時計の狂い・アルコールなどが挙げられる。原因が分かっていない部分が多いため、今回の記事では扱わない。

二次性頭痛

原因がはっきりしている頭痛のことを言う。原因となるものには、外傷・感染・脳腫瘍・薬物乱用などがある。くも膜下出血などのように生命に関わるものも含まれる。突然起こる頭痛、今までに感じたことのない頭痛、言葉や運動麻痺が同時に起った頭痛などは生命に関わる可能性が高いため、すぐに脳神経外科や神経内科を受診する。命に関わる危険性のある頭痛のため、今回の記事では扱わない。

頭痛と睡眠の関係

頭痛と睡眠には因果関係が認められているが、どのような関係があるのだろうか。寝不足と寝過ぎ、どちらも頭痛の原因となりうる。それぞれ、どのような要因で頭痛を引き起こすのかをみていく。

片頭痛

寝不足との関係

眠れない場合のストレスによって、神経伝達物質であるセロトニンが分泌される。セロトニンは血管を収縮させる作用を持っているが、ストレスが少なくなると、セロトニンの分泌は減少する。その結果、血管を収縮させる働きが弱まり、血管は拡張されて片頭痛を招く。例えば、仕事のある平日にはあまり頭痛が起こらないが、休日になると頭痛が起こりやすいということがある。

寝過ぎとの関係

睡眠時は副交感神経優位な状態になるため、頭の中の血管が拡張する。寝過ぎた場合には、血管の拡張する時間が長くなるために三叉神経が刺激されてしまい、片頭痛を引き起こしやすくなる。

対処法

片頭痛の原因の一つは、脳の血管が拡張してしまうことであるため、血管を収縮させるような対処を行うとよい。例えば、頭を氷のうや冷却ジェルなどで冷やすと血管を収縮させるために効果的な場合がある。また、カフェインは血管を収縮させる効果があるため、お茶やコーヒーを飲むのもよい。

緊張型頭痛

寝不足との関係

眠れない場合のストレスなどにより、頭や首、肩周辺の筋肉が緊張し緊張性頭痛を引き起こす。

寝すぎとの関係

寝相の悪さや冷えによって筋肉の緊張を引き起こす。枕の位置や高さ、寝床の硬さなども影響を及ぼす要因になる。

対処法

緊張型頭痛の原因は、頭や首、肩周辺の筋肉が緊張することである。対処法としては、筋肉の緊張をほぐすためにマッサージをするとよい。また、お風呂につかったり、筋肉を温めたりするなどして血液の循環をよくすることも効果的。軽度の場合であれば、ウォーキングやジョギングなどの軽い運動を行い、全身の筋肉の温度を上げていくこともよい方法である。

片頭痛・緊張型頭痛への対処法に共通する注意点

痛みがひどく、やむを得ず市販薬を服用することもある。その際には、用法用量を正しく守って服用しなければならない。最近は、薬物乱用型の頭痛を引き起こす例が多くみられている。市販薬や鎮痛薬の用法用量を守らず、頻繁に服用してしまう場合には逆に頭痛を引き起こしやすくなる。そういった状況におちいる前に、必ず最寄りの医療機関を受診することをおすすめする。

睡眠の質を高めることが頭痛予防には重要

体内時計を整える

忙しい仕事の毎日でなかなか規則正しい生活を送るのは難しいことかもしれない。しかし、心身の健康を考えると、規則正しい生活を心がけることは重要である。平日は寝不足で、休日にまとめて睡眠を取る場合もある。平日と休日の睡眠時間は、1時間程度の差にとどめておくことで生活のリズムの崩れは防ぐことができる。しかし、いわゆる寝だめをすることで睡眠不足が解消されるわけではない。できるだけ、平日、休日ともに十分な睡眠時間を確保することが大切となる。また、起床時にはできるだけ朝日を浴びるようにする。朝日を浴びると体内時計がリセットされる効果があり、リズムの乱れを整えてくれる。

自律神経を整える

自律神経は、ストレスや不規則な生活などによって乱れてしまう。活動している時に優位になる交感神経とリラックスした時に優位になる副交感神経の切り替えをうまくできるようにすることが大切である。睡眠前には、副交感神経が優位になるよう工夫しなければならない。例えば、入浴は37~38℃程度のぬるめのお湯に10分以上ゆっくりとつかるとよい。また、就寝前にはスマホやパソコンの画面を見ないことも重要である。

適度な運動を行う

仕事でほとんど体を使わない場合は、適度な運動を習慣化させるとよい。ある程度の身体的エネルギーを消費していなければ、人間の体は睡眠に向かっていかない。適度な運動を行い、適度な疲労感を得ることによって睡眠の質を高めることができる。筋トレや有酸素運動は、就寝前に行うと交感神経が優位となり逆効果になってしまうため、運動を行うタイミングには注意する。就寝前であれば、ストレッチやヨガなどの刺激が少ない運動を取り入れる。

カフェインやアルコール摂取に注意する

コーヒーなどのカフェインが含まれる飲み物は、午後3時以降には飲まないように注意する。カフェインは、眠気を覚ます覚醒効果があり眠れなくなってしまう。また、利尿作用もあるため、眠りを妨げられてしまうこともある。アルコールは、適量であれば入眠しやすい効果がある。しかし、飲み過ぎてしまうと睡眠の質が下がってしまい中途覚醒を招く。また、利尿作用があるため、カフェインと同様に眠りを妨げられることもある。

ストレス解消を心がける

心身のストレスは、睡眠の質に大きな影響を与える。心のストレスは寝不足を招き、体のストレスは寝過ぎを招きやすい。仕事で抱えた心身のストレスは、趣味活動などの好きなことに時間を費やして溜め込まないようにすることが大切である。

いかがだろうか

日本人の3~4人に1人が頭痛に悩まされている。この要因には、ストレス社会の影響があるのは言うまでもない。頭が痛くなると仕事の効率が下がることはもちろん、何もやる気にならなくなるものである。そんな頭痛をできるだけ防ぐためには、睡眠が大切であることが分かった。寝不足や寝過ぎることなく、質の高い睡眠を獲得できれば健康な体で毎日の生活を送ることができる。注意が必要なのは、ひどい頭痛が頻繁に起こる場合には、最寄りの医療機関を受診することである。ひどい頭痛を引き起こす前に、ご自身の健康のため、今一度、生活を見直してみてはいかがだろうか。

参考:「睡眠におけるゴールデンタイムは存在するのか」
https://www.saluce.jp/wp/articles/61

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