グルテンフリーは本当に効果的なのか
近年話題の、グルテンフリーダイエット。世界的に有名なテニス選手のジョコビッチが言及したことがきっかけで、健康志向の高い女性やビジネスマンの間で一気に話題になった。しかしこのグルテンフリーは、実はいくつかの誤解と共に広まり、その効果についても研究で証明されている訳ではない。本記事ではグルテンフリーの正しい知識を解説していく。
近年、グルテンフリーダイエットが話題になっている。世界的に有名なテニス選手であるジョコビッチが、その著書の中でグルテンフリーダイエットをしたことで体調が改善したと紹介したことなどで、健康志向の高い女性やビジネスマンの間で一気に話題になった。しかしこのグルテンフリーは、実はいくつかの誤解と共に広まり、その効果についても研究で証明されている訳ではない。今回は、グルテンフリーに関して改めて解説していこう。
目次
そもそもグルテンとは
そもそも、グルテンとはなんだろうか。小麦には6~15%ほどのタンパク質が含まれている。タンパク質にもいくつかの種類があるのだが、その中でも多くを占めるのが「グルテニン」と「グルアジン」だ。グルテンとは、小麦に水が加わり、こねられた際に、この2つのタンパク質が絡み合ってできる成分のことをいう。
グルテンの大きな特徴はその弾力性にあり、小麦料理である麺やパンなどを作る際にはこのグルテンは欠かせないモノとなっている。
グルテンの大きな特徴はその弾力性にあり、小麦料理である麺やパンなどを作る際にはこのグルテンは欠かせないモノとなっている。
グルテンは身体によくないのか?
小麦製品のほとんどに入っているこのグルテンだが、グルテンを食べないグルテンフリーが流行っているということは、グルテンは身体によくないモノなのだろうか?
科学的には、以下の3つのいずれかに当てはまる場合にはグルテンにより体に不調をきたす可能性があるとされている。
科学的には、以下の3つのいずれかに当てはまる場合にはグルテンにより体に不調をきたす可能性があるとされている。
<グルテン関連障害の分類と疾患例>
(1)自己免疫系:「セリアック病」
(2)非自己免疫・非アレルギー系:「非セリアック・グルテン過敏症」
(3)アレルギー系:「食物アレルギー」
(1)自己免疫系:「セリアック病」
(2)非自己免疫・非アレルギー系:「非セリアック・グルテン過敏症」
(3)アレルギー系:「食物アレルギー」
セリアック病とは、グルテンに反応して起こる免疫反応により、小腸が損傷をうけることで吸収不良が起きる病気のことだ。これにより、下痢や便秘、疲労、体重の低下などが引き起こされる。北欧系の人に多い疾患とされ、日本人でこれに当てはまるのは1%以下と言われている。
3はいわゆる小麦アレルギーのことだ。
2は1, 3以外のグルテンが原因で生じる不調全般を指し、症状としてはセリアック病であげたものと似た症状になることが多い。
3はいわゆる小麦アレルギーのことだ。
2は1, 3以外のグルテンが原因で生じる不調全般を指し、症状としてはセリアック病であげたものと似た症状になることが多い。
もともとグルテンフリーというのは、セリアック病患者のための治療として生まれたものでもあり、これら3つのいずれかに当てはまる場合には、グルテンフリーの食事というのは、効果的だ。
グルテンフリーの火付け役となったジョコビッチは、検査によって小麦アレルギーであったことがわかっており、グルテンフリーの生活をすることで、大きな効果を得たと考えられる。
グルテンフリーに関する勘違い
このように、グルテンは確かに身体への悪影響を与える可能性がある。
しかし、上記で示した3つの疾患のいずれかに当てはまる可能性のある人は、人口に対して1%程度と決して多くはない。それなのに、なぜ現在ではこれほどまでにグルテンフリーが広まっているのだろうか。ここではグルテンフリーの流行と共に広まった2つの誤解について解説していく。
しかし、上記で示した3つの疾患のいずれかに当てはまる可能性のある人は、人口に対して1%程度と決して多くはない。それなのに、なぜ現在ではこれほどまでにグルテンフリーが広まっているのだろうか。ここではグルテンフリーの流行と共に広まった2つの誤解について解説していく。
グルテンフリーは万人に効果的?
ここまで、示した通り、グルテンフリーの食事というのは、上記のいずれかの疾患に当てはまる場合には効果的だ。万人にとって効果的な食習慣であるかのように広まっているが、それは大きな誤解なのである。
グルテンフリーにすることで、寝起きがよくなったといった経験談が語られることもあるが、これら人はもともと上の疾患のいずれかに当てはまっていた可能性がある。
また肌の状態が改善するなどの美容効果なども紹介されているが、これに関しては、研究では証明されていない内容だ。
グルテンフリーにすることで、寝起きがよくなったといった経験談が語られることもあるが、これら人はもともと上の疾患のいずれかに当てはまっていた可能性がある。
また肌の状態が改善するなどの美容効果なども紹介されているが、これに関しては、研究では証明されていない内容だ。
グルテンフリーにすると痩せる?
もう1つ大きな誤解として広まっているのが、グルテンフリーが痩せるための方法であるという勘違いだ。なんとも信じられない話だが、欧米で「グルテンフリーダイエット」と言われた時のダイエットを、日本語の意味の「ダイエット」と捉え、痩身に効果があると勘違いされたようだ。しかし、英語のダイエット(diet)は「食習慣」という意味で、グルテンフリーダイエットとはグルテンを取らない食習慣という意味である。
グルテンフリーにすることで痩せた、という体験談もあるが、これはグルテンによるものというよりも、小麦を取らないよう食事に気を使った結果、カロリーの高い菓子やファストフードを控えたり、麺やパンなどの炭水化物の摂取量が減ったことが原因だろう。ダイエットを目的にするのであれば、グルテンフリーを意識する必要はないと言えるだろう。
グルテンフリーはリスクを高める
このような誤解と共に広まったグルテンフリーだが、セリアック病をはじめとした疾患とは関係のない人がグルテンフリーの食事をとることは、効果が出ないだけでなく、逆に健康を損なうことになるかもしれない。
栄養バランスを崩し心血管リスクが高まる
小麦にはグルテンだけでなく、健康を保つために必要な成分が多く含まれている。
その1つとしてあげられるのが、食物繊維だ。食物繊維は小麦の中でも全粒穀物に多く含まれているが、グルテンフリーの食事にすることで本来は身体に良いはずの全粒穀物の摂取量が減り、心臓や血管の病気のリスクが高まることが、わかっている。
研究によればグルテンの摂取量が少ない研究対象の集団はグルテンの摂取が多い対象と比較すると、冠動脈疾患発症のリスクが15%高まったということだ。
(BMJ2016;357:i2716., JAMA Intern Med2015;357:373-84.)
その1つとしてあげられるのが、食物繊維だ。食物繊維は小麦の中でも全粒穀物に多く含まれているが、グルテンフリーの食事にすることで本来は身体に良いはずの全粒穀物の摂取量が減り、心臓や血管の病気のリスクが高まることが、わかっている。
研究によればグルテンの摂取量が少ない研究対象の集団はグルテンの摂取が多い対象と比較すると、冠動脈疾患発症のリスクが15%高まったということだ。
(BMJ2016;357:i2716., JAMA Intern Med2015;357:373-84.)
グルテンフリーが体に良い、という断片的な情報で手を出すのは実は非常に危ういことなのである。
まとめ
いかがだっただろうか。近年では糖質ダイエットや、それに続いてグルテンフリーダイエットと特定のものを断つことで身体によい影響がある、というような言説が人気を集めている。しかし、正しい知識を持たずに安易にそれらに飛びつくと、効果がないどころか、身体に悪影響である場合もある。
もし、身体の不調などからグルテンフリーを検討しているのであれば、まずはきちんと病院を受診して、自分に疾患があるのかを検査し、効果があることを確かめた上でグルテンフリーを取り入れるようにしよう。
もし、身体の不調などからグルテンフリーを検討しているのであれば、まずはきちんと病院を受診して、自分に疾患があるのかを検査し、効果があることを確かめた上でグルテンフリーを取り入れるようにしよう。